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地名

山村留学指導員 山口楓雅

 水の王国とやま―立山連峰が成す独立した水循環が、美しい自然と文化を作り上げる。この自負は過言ではなく、余所者の私も恩恵にあずかっている。それは単なる水資源だけでなく、自分の好奇心を深く満たしてくれる県なのだ。

 利賀村もまた、清流文化の根強い、水の王国の一員として恥じない地域であるが、地図を広げると気になる地名が目に入る。利賀川の源流部、村の人も滅多に行くことのない秘境「水無」。豪雪地帯の源流地域であり、地図には川が描かれているのに、なぜそんな名がつけられているのだろうか。
 地名は、その地に起きた自然現象を読み解く大きな手掛かりだ。流れる水が無くなる現象は限られる。地質図も参照しながら、一つの仮説を導き出す。ズバリ、地中の石灰岩が浸食されて生じた鍾乳洞(しょうにゅうどう)へ川が流れ込み、水が無くなったように見えるのではないか。
 真相を確認するため、現地へ。豊富な水の流れを横目に、水無集落跡地の石碑に答えを求めた。
曰(いわ)く、「此の地は上流河水流れども途中自然に地中へ潜り下流大水湧出するを以って(中略)地名を水無と名付けたり」。
洞窟の記載はないが、概ね正解。一つの地名の由来を知り得た。未発見の洞窟があるという可能性を秘めた特大ロマンを添えて。現地の転石は確かに石灰岩であり、豪雪地帯の豊富な雪解け水が大規模な鍾乳洞を造り出していてもおかしくない。この洞窟を見つけることができれば、水無の名の本当の真実に辿(たど)りつけるはず。次なる野望も得て、大満足だ。
 以上、先日「利賀の各地区名の由来を劇で発表したい」と留学生が話しているのを聞き、思い出した一件であった。地名は、文献や口伝で知った上で、現地で体感することで深い見識となる。彼らにも、その楽しさを味わった上で劇を作り上げてほしい。

写真:石灰岩の壁
写真:石灰岩の壁














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