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伝統が息づくところ
南砺利賀みらい留学
山村留学指導員 松浦実穂
五月。今年も利賀の各地区で春祭りが行われた。私は、毎年ホームステイで留学生を受け入れてくださっている阿別当地区の獅子舞と、昨年二名の留学生がお世話になりご縁があった上百瀬地区の獅子舞に、笛吹のお手伝いとして参加した。地区の方々が百五十年ほども繋いできた獅子舞に、未熟な笛を温かく交え、教えてくださることが、単純にとても嬉しい。
人口が減りつつある利賀では、獅子舞の継続という課題に対してそれぞれの地区が試行錯誤を重ねている。今年、阿別当地区では、獅子取りという役のうちの一人を初めて女の子が担った。上百瀬地区では、獅子舞の担い手が若連中から保存会になり、大先輩方が獅子方に復帰した。地区によって様々な変遷がありながら、獅子舞は受け継がれている。
しかしその実、祭りの魅力は決して失われていない。今年も、春の喜びを集めたような長閑(のどか)な景色の中で祭りが始まった。花壇にはチューリップが咲き、家の角にはタンポポが咲いている。親戚が集まり、地区が賑(にぎ)わう。空高く上がる旗。笛と太鼓と人の声。駆けまわる子どもたち。宮に入る前の温まる一杯。躍動する獅子。開け放たれた縁側に広がる笑顔。こういう一瞬一瞬は、胸がキリキリするほど味わい深い。様々な瞬間に、景色への愛があり、地区への愛があり、家族への愛がある。こんな喜びが溢(あふ)れていればこそ、ここに伝統が息づき、形を変えながら生き延びているのだろうと思う。
利賀に来て五年。ここに住まう方の「祭りが終わって皆が街に帰っていく時間が一番嫌い」という名残惜し気な呟(つぶや)きが沁(し)みたこの春。留学生や私たちがここに身を置かせてもらっていることの学びと幸せを、年を重ねるごと痛切に感じている。
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写真:休憩中、春の日差しが暖かい
